ストーリーはkiller7とその旧敵である魔人クン・ラン(及びその配下である「笑う顔」)との対立を中心に、近未来の日本と合衆国間の政治的駆け引きや国家的陰謀を横軸として複雑に展開する。
タイム ハンド トリニタ テンシル ファクトリー ふたつ星 はなの舞 ブロイラー スペクタ だっと ラマズダ キーバス 後ろゆび ドラッ エンド もくと トップラ ヒップ トルテ ドーパミン ボケ インタ ファミ テレポ ぱらぴーの タリカ ピューレ カピタン セブサー 春一輪 レイガイド ポット レグルス ロビイ 秘密の花園 コバノ リンワキ ソフトサーチ ムチャコジ オルガン ゲッツ スプーン ランタ しゅいろ うしべに パンパ ブザー ロカール ランダム サブアリ
現実と内的世界とが混然となった表現や、意図的な説明の省略、プレイヤーに対するミスリードなどが頻発するきわめて難解な構成となっており、物語全体の完全な読解は困難である。この点についてプロデューサーの小林裕幸は攻略本『キラー7 オフィシャルコンプリートガイド』[2](以下コンプリートガイド)のインタビューにおいて、この物語は理解するよりも感じるべきものであり、プレイヤー各人が自分なりの解釈をすべきとの見方を示している。
また作中で多くの伏線が回収され物語として完結する一方、ゲーム発売の約2ヶ月後に発売された公式「副読本」こと『Hand in killer7』では、それまでの物語がより大きな物語全体の一部でしかなく、ゲーム中で判明したと思われた事実にも異なる裏の面があったことが示唆されるという複層的な構造になっている。『Hand in killer7』では劇中の矛盾点や説明が省略された設定のフォローが多く行なわれているが、反面同書の記述からは解消されない疑問点、新たに提示された謎も多い。巻末のインタビューの中で須田剛一自身は、『Hand in killer7』で語られているストーリーが事実であり、解釈の正解も存在するとしつつも、その真実はプレイヤー自身が探すべきものであると発言している。
TARGET:00「天使」
多目的施設“セルティック”の乱戦 NEWORDER:NO.33 “笑う顔”本陣壊滅依頼及び、首領の生け捕り
killer7は、多目的施設ビルを占拠した「笑う顔」の殲滅とその首領の捕獲を依頼される。突入したその施設内では既に「笑う顔」が増殖し生存者は絶無となっていた。killer7はこの施設における「笑う顔」のリーダー格「天使」と遭遇するが、その背後には死んだはずの宿敵、クン・ランがいた。
物語の導入部。ストーリー全体から複雑な要素を極力削り、「笑う顔」やクン・ランとの対決にテーマを絞ってバイオレンスアクションを重点的に描いている。ただし伏線としてこの章で既に鳩書簡やトラヴィスが「エミール」という謎の人物に言及している事は注目すべき要素である。
TARGET:01「落日」
懐石料亭“フクシマ”の決戦 NEWORDER:NO.34 トオル・フクシマ総裁抹殺依頼
突如、日本に向けて200発のミサイルが発射された。合衆国には安全保障条約に従いミサイルを迎撃する義務があったが、時を同じくして日本政府与党「国連会」総裁トオル・フクシマが合衆国に対し強硬政策に出る。支援国の域を脱し力をつけすぎた日本の姿を目の当たりにし、合衆国は「花火」(ミサイル迎撃)の実行に躊躇せざるを得ない。合衆国は国連会の翻意を迫るため、また日本を弱体化させるためにkiller7にフクシマの暗殺を依頼する。その背景にはフクシマが持つとされる世界情勢を変える力を持つ論文「八雲当時内閣政策論」の存在があり、密かに「八雲」を処分しようとする思惑も隠れていた。
フクシマがオーナーを務めるワシントンD.C.の「料亭フクシマ」に突入するkiller7だが、フクシマを狙うのはkiller7だけではなかった。フクシマの対立路線をよしとしない日本政府野党第一党「自民会」。フクシマの対立路線を利用し日本を世界から孤立させることにより花火の阻止に持ち込み、転覆する日本の利権と「八雲」を奪取するという一石二鳥を狙う国際機構「国際倫理機関」。そして合衆国政府を背景に持つkiller7との三つどもえの構図となる。フクシマは自民会から放たれた暗殺者ジュリア・キスギによって抹殺されるが、「八雲」は国際倫理機関の諜報員、ジャン・デポールによって何処かに持ち去られる。
国際情報交流法治区“角ビル”の騒乱 NEWORDER:NO.35 諜報員ジャン・デポール抹殺依頼
ミサイル迎撃のタイムリミットが迫る中、killer7は自民会の情報屋ヒロ・カサイからジャン・デポール殺害の依頼を受け、各国のシンジケートが密かに雑居する「国際法治区域」角ビルに向かう。角ビルでは合衆国と日本それぞれの代表による保障条約とミサイル迎撃の行く末をめぐる会談が行われていた(フクシマ死亡による混乱の末、日本代表には野党自民会議員が出席している)。デポールは両国代表を暗殺し両国の融和を阻止するヒットマンとして送り込まれていたが、この時点で既に日本はその利権を求める周辺国家によって国際社会から孤立させられており、デポールの到着を待たずして会談は決裂。日本はミサイルの雨に晒される。
一方killer7のあずかり知らぬ所で、フクシマを失った国連会では長老のクラハシ・ヒロヤス、アキバ・シンヤらが最後の若手実力者、統括本部長マツオカ・ケンジロウ(通称マツケン)に世代交代を迫っていた。この場に突如現われたクン・ランは未だ男になりきれないマツケンを「神の手」で覚醒させ、クラハシとアキバは「笑う顔」と化した真の姿を明らかにする。
この章では「天使」から一転し、きわめて混迷した政治的駆け引きが本筋の暗殺行と平行して語られる。特にゲーム中は各組織の立場や思惑の多くが省略されて描かれており混乱を呼ぶ。この章で語られる日本の転覆、そして謎のテキスト「八雲」という要素は物語を通じて重要な意味を持つことになる。
TARGET:02「雲男」
新興理想都市“ウルメイダインターシティ”の波乱 NEWORDER:NO.36 起業家アンドレイ・ウルメイダ捜索依頼
正体不明の起業家アンドレイ・ウルメイダがガルシアン・スミスを挑発し呼び寄せる。テキサス州に向かったkiller7が着いた町、ウルメイダインターシティはウルメイダのカリスマの下に奇怪なコミュニティを形成していた。
ウルメイダが会長を務める「ファーストライフ」は実体の無いペーパーカンパニーであり、その名の下に構築されたウルメイダインターシティはウルメイダの実験場、そして同時に軍の監督下に置かれた軍用都市でもあった。ウルメイダは潜在的な「笑う顔」となっており、killer7に自分の駆除を依頼する。これこそがウルメイダの目的であった。
ここまで常にどこかいかがわしさを漂わせていた舞台をテキサスの明るい陽光の下に転じ、一見清潔で平和な理想都市での銃撃行を描くというシニカルなユーモアに満ちた異色の章。作中でもたびたび馬鹿にされるウルメイダの極端なアフロヘアーとそれをさらに強調する変身後の姿、ジョギングで道行く健康的な「笑う顔」ウルメイダスマイルなど、敵方までもがコミカルに描写されている章だが、その背景として描き出される都市のいびつな姿にはシリアスな狂気が秘められている。
また、実体が無いにも関わらず現実の事象として認識されるファーストライフという企業、そして逆に実在しつつも生死の境を潜り抜けることでしか自己のアイデンティティを確認できないウルメイダの姿は、曖昧な現実性という物語終盤での重要なテーマの伏線と捉えることもできよう。
TARGET:03「邂逅」
遊園地“ISZKLAND”の悪行 NEWORDER:NO.37 同業者カーティス・ブラックバーン暗殺依頼
ダン・スミスのかつての殺しの師であり、ダンを殺した男でもある殺し屋、カーティス・ブラックバーンが移民局を襲撃し虐殺を行なう。移民局は元々カーティスとその部下ペドロの非合法な臓器売買マーケットの温床であり、裏切って市場を独占したペドロへの報復がこの虐殺行為であった。カーティスの暴走を受け、政府はkiller7にカーティス暗殺を依頼する。killer7はカーティスの隠れ家である遊園地「ISZK LAND(イシザカランド)」へ向かったが、カーティスの愛弟子アヤメ・ブラックバーンに遮られ取り逃してしまう。
潜伏地“カーティス邸”の凶行 NEWORDER:NO.37 同業者カーティス・ブラックバーン暗殺依頼
カーティスの怒りを買ったペドロは惨殺される。killer7はカーティスを追い、その私邸へ。因縁深いダン・スミスとカーティスとの一騎打ちはダンの勝利に終わり、カーティスは自身の悪行の報いを受けて惨たらしく死ぬ。
スミス同盟の人格の1人ダン・スミスを主人公格に据え、その復讐劇を中心に描いた章。遊園地での数々の暢気なアトラクションや美少女戦士物アニメを思わせるアヤメ・ブラックバーンの口上など、人を食った演出が目立つ一方で、序盤のカーティスによる「笑う顔」と無関係な人間対人間の虐殺描写に始まり、孤児・小児を対象とする誘拐や臓器売買、小児性愛、ネクロフィリアなど過激でインモラルな題材を多く扱っているのもこの章の特徴である。
TARGET:04「分身」
ドミニカ共和国“光と影の町”の迷走 NEWORDER:NO.38 コミック作家トレヴァー・パールハーバー密殺依頼
コミックヒーローの姿をした集団「ハンサムマン」がコミックでの予告通り、合衆国与党「民産党」の幹部を殺害した。これはコミック上のストーリーを現実化するという大手メディア「エレクトロ&ライン社」の広告戦略の結果であった。事態を収拾するためコミック作家トレヴァー・パールハーバーの暗殺を依頼されたkiller7だったが、それすら察知していたかのようにコミック上では既にkiller7対ハンサムマンの戦いが予告されていた。
ドミニカ共和国、トレヴァーのアトリエでkiller7はハンサムマンと激突。トレヴァーの慢心を快く思わない広告代理店の指示でハンサムマンがトレヴァーを殺害し、スミス同盟とハンサムマンは戦いの場所を移すこととなる。
摩天楼“ブロードウェイ”の軍団対抗戦 NEWORDER:NO.39 匿名仕置戦隊ハンサムマン果死合
ニューヨークのブロードウェイを舞台に、ハンサムマンとスミス同盟の全員が集合し、格闘ゲームめいた1対1の決闘が始まる。ガルシアンはゲーマーのラブ・ウィルコックスと出会い、ラブはトレヴァーを殺したエレクトロ&ライン社への復讐を誓って画面上から消えた。ゲームのエンディング画面をクン・ランが消す。
戦隊ヒーロー物めいたヒーローチームが殺人事件を起こし、それ自体が広告代理店の集客戦略の一環であるという奇抜な設定から描かれた章。大手企業が市場に迎合するあまり作家のクリエイティビティが歪められる様は現代社会のカリカチュアと捉えることもできるが、見方を変えれば、独自の販路を持たず常に大手メーカーの下で開発会社の立場から作品を作り続けてきたghmと須田剛一の痛烈な皮肉と受け取ることもできる。
ストーリー全体の流れとはほぼ無関係なエピソードであるが、章後半には前後の脈絡を感じさせないきわめて分裂的な展開を見せ、単なる一挿話で終わらない文学性も持ち合わせる。ここで描かれる現実と非現実の境界が曖昧に描かれる世界観は次章「笑顔」の展開の先触れと言うこともできる。なお、ディレクター須田剛一は『Hand in killer7』内のインタビューで、この章後半の決闘シーン以降の演出のモチーフを敬愛する『ストリートファイターII』に求めていると語っている。
TARGET:05「笑顔」
ホテル“ユニオン”の聖戦 NEWORDER:NO.40 国連会マツオカ・ケンジロウ密談計画
サマンサが「失踪」し、ハーマンはガルシアンの前から消える。日本与党国連会の唯一の幹部となったマツケンは、今や世界の日系移民の票を束ねる実力者となっていた。合衆国政府は日本との融和のためマツケンのもとにkiller7を派遣する。
killer7は向かったフィラデルフィアのホテル・ユニオンで、7つの階にある7つの魂弾を手に入れる。マツケンがいる筈の最上階では謎の男2人が待っており、マツケンは既にホテルにいないと言う。
国立“コバーン小学校”の死闘 NEWORDER:NO.41 国家中枢部接触依頼
新しい情報屋を自称するリンダ・バーミリオンを通じ、killer7は合衆国の「システム」を見届ける依頼を受ける。向かった国立コバーン小学校では合衆国が選挙戦に秘めた陰謀と、謎の少年エミール・パークライナーの素性が明らかになる。コバーン小学校の校長ベンジャミン・キーンは大統領となる野望を胸に死に、文部省長官グレッグ・ナイトメアも合衆国との対立を選んだマツケンに首を縊られる。
ホテル“ユニオン”の血戦 NEWORDER:NO.42 最後の依頼
最後の人格となったガルシアンはホテル・ユニオンに戻り、過去の事件の記憶を追体験する。ガルシアンは最上階にいた謎の男と再会し、自身の正体を知る。最上階よりさらに上の階に昇ったガルシアンは予期せざる来訪者となり、ホテルの屋上でエミール・パークライナーと対決する。
実質的な最終章。住み慣れた世界観が崩壊していく序盤、謎に包まれたホテル・ユニオンでの戦いを経て、舞台はコバーン小学校へと移る。ここで国家的陰謀の謎が解かれていく様はスリリングであるが、物語はそこには収着せず再度ホテル・ユニオンに舞台を戻し、衝撃的なクライマックスを迎える。前章に輪をかけて分裂的な演出と、ここに至るまでの様々な伏線が収斂してゆく脚本が見所となる。
またここで描かれている、組織的権力によって個人が管理され無自覚のうちにその存在を歪められる恐怖は、須田の過去作『シルバー事件』とも共通するテーマでもある。
TARGET:06「獅子」
北太平洋“戦艦島”の駆除 NEWORDER:NO.43 決着
3年後、最後の「笑う顔」を求め、ガルシアンは廃墟と化した日本の「戦艦島」へ向かう。その前に陣取ったマツケンはガルシアンに、日本の国際連合を利用した合衆国への報復をとるか、それとも合衆国の日本への止めの一撃をとるかの選択を迫る。ガルシアンは見知った戦艦島の内部に入り、最後の「笑う顔」を追い詰める。
100年後の上海にて新しい戦いが始まる。
前章で一旦完結した物語のエピローグとなる章。きわめて短いシナリオの中に数々のどんでん返しが配されており、物語は二転三転する。